岸本、ガンバレ!

数日前、年配の男性から自宅にお電話を頂いた。
「岸本君の友人だった○○です。今年もマラソンに出るのですか?」
岸本は亡くなった父の姓、もちろん私の旧姓、離婚しても佐藤を名乗っているのは便宜上のことである。

昭和5年生まれの父は終戦時には陸軍幼年学校の生徒だった。
電話の主はその「陸幼」の同級生のKさんであった。
父やKさんらはすんでの所で出陣には至らず、その後成人してそれぞれの人生を歩む中でずっと交流を続けてきたのである。
父も同級会の幹事や会報の編集などをしていたらしい。
六十頃から若いときに患った結核の後遺症が出始め、晩年は車椅子と酸素ボンベの必要な身となって会合への出席もままならかったが、Kさんらはよく父を訪ねて下さった。

スポーツに縁がなく、私のマラソンにもさほど関心を示していなかった父だが、ある時私がマラソンの話題でNHKラジオに出演することになると、何を思ったか陸幼のお友達にそれを触れてまわったのである。
やはりこの年代の方にはNHKに大きな価値があるらしい。
生放送の最中にお便りのファクスを送って下さったり、それが番組中に採用されたりと、Kさんらの間では「マラソンを走る岸本君の娘さん」は俄かに人気者となった。
翌年からは、大阪国際女子マラソンをテレビでしか見られない父に代わって沿道で声援を下さった。
そして一昨年の春、闘病むなしく父がこの世を去った時には最後に棺を担いで送って下さった。

昨年の大阪国際女子マラソン、父はもういないのに、何とKさんらのお顔が沿道に見えた。
長居公園のゴールに帰ってきた時には一際大きな声が心に染みた。
「岸本光子、ガンバレ!」

電話を下さったKさんは私のゼッケン番号を尋ね、今年も大阪城と長居公園で応援するからと仰った。
「どうぞ『岸本!』と声をかけてください、そうすれば必ず気がつきますから」と言うと大変喜ばれたが、
「あんたももう歳なんだから無理したらいかんよ、2時間50分を切ろうなんて考えんでよいからね」と仰った。
う~む、すっかりマラソン通になっておられる。

70歳を優に超えるKさんたちのためにも、当日が穏やかな天気になることを祈りたい。
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by runmama | 2005-01-26 18:43