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あと1マイルは「スグそこ」とはいえない~NYCM完走記

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ニューヨークシティーマラソン、あの熱いレースから1週間。

公式サイトによれば今年は過去最高の37597人がスタート、36847人がゴールした。
私は3時間6分37秒で852位(女子では58位、年代別9位)だった。

本当はカメラ片手に5分ペース、3時間半を目標にしようと思っていた。
世界一の参加者と沿道の声援、普通の観光では訪れにくい所もすべて自分の脚で走ってしまえる・・・そんなNYCMの魅力を無視してガンガン走るなんてもったいない!
大阪国際に向けてのトレーニングは日本でちゃんとやればいいんだから。

・・・と決めてたはずなのに、国内でのトレーニングが遅れ気味で「遊んでる場合じゃないよな~」と焦る
→4日前に捻挫して一時は走るのをあきらめる
→捻挫が治ったと思ったらカメラをなくし「やっぱりマジで走ろうか」と気持ちが揺れる
→なんとお客様がカメラを貸して下さり「やっぱり写真とろう」・・・。
結果的には直前のこんなドタバタをきっちり反映して、ラップや心拍の安定しないレースでした(反省)。

初めのベラザノ・ナロー・ブリッジ、私のグラフでは高低差40m。
1981年までは世界一長い橋だった(アプローチを含め2.7マイル、今は世界で7番目)。
立ち止まって写真を撮ったら、何万というランナーの足がこの巨大な橋を揺るがしているのを実感して鳥肌が立った。

しかし前方集団での撮影ランは難しい。
世界の国々からのランナー、沿道の二重三重の人垣、10箇所のステージの100以上のバンド演奏、ブロックごとに個性的な町並み。
2日前にバスで下見をした時に撮影ポイントをおよそイメージしておいたのだが、周りのランナーの流れが早く、そうそう立ち止まってもいられない。

走りながらシャッターを押していたら、画面の中を黄色いウェアの女性が走って行った。
あっ、ランナーズ誌上の企画で小出監督の指導を受けてるHさんだ。
Hさんとは顔見知りなんだけど、邪魔しちゃいけないと思って黙って後ろを追いかけた。
これがいけなかった。5マイルから10マイルぐらいまで、予定外にペースが上がっちゃった。
ついつい横に並んで気づかれてしまったのを潮に「頑張ってね~」と静かに後退(笑)。
真摯にトレーニングを積んできた彼女に、半端な気持ちの自分が着いていける訳がない。

10マイル過ぎから熱さが猛烈に気になりだした(後でわかったが21℃!)。
大量の汗、シャツも肌に貼りついて息苦しい。
走りながらナンバーカードの安全ピンをはずし、シャツを脱いだ(スミマセン、道端に捨ててきました)。
ブラトップにナンバーカードを付け直し、ヘソだしウェアで再スタート。
かなりラクになった。

15マイルからのクイーンズボロー・ブリッジも高低差40m。
ここは観衆もほとんどいないし、頭上に屋根があって何となく暗い。
マラソンの壁の25キロあたり、長い長い上り坂をみんな黙々と走っている。
この橋の途中で見覚えのあるライトグリーンのシャツ、松葉杖をついた義足のランナーに追いついた。
ゴールドコーストでもお会いした日本人ランナーSさんだ。

私たちより2時間ほど前にいろいろな障害を持ったランナーがアーリースタートして、同じゴールを目指している。
レース仕様の車椅子ならトップは1時間30分でゴールしているが、他に生活用車椅子の人も松葉杖の人も視覚障害の人も知的障害の人もいて、私たちが後から追いつく格好になる。
Sさんは日本からの伴走者と揃いのグリーンのシャツで出場していらしたが、ほとんどの人はアキレストラッククラブの赤いシャツ、伴走するメンバーも同じ赤いシャツを着ていた。
日本にも支部のあるアキレストラッククラブは、障害者ランナーの支援活動を行っていて、このニューヨークが本拠地だ。
彼らが通ると沿道からは一際大きな歓声が沸き起こっていた。

NYCMのプログラムには沿道観戦者への懇切丁寧なアドバイスも掲載されている。
観戦の必需品(歩きやすい靴、地下鉄の一日パス・・・)、お薦めスポットなどなど・・・う~ん、誰かさんも同じ発想(笑)。
で、応援のコトバに関するアドバイスもあって「ゴール地点近くにいるのでもなければ『もうスグだ!』と声をかけてはいけない」んだって。
マラソン終盤ってのはランナーにとって果てしなく長く思えるもので、たいていの場合エネルギーも切れる寸前、たとえゴールまで1マイルといっても「スグそこ」とは言えないのだ、な~んて書いてあった。
そして「シャツに書いてある名前を大きな声で呼んであげよう」と書いてあった。
シャツはもちろん、腕や脚に直接、国や自分の名前を書いたり、国旗をペイントしているランナーも多くて、みんな名指しの声援を受けていた。
ああ~、私、名前なんて書いてない。。
せめて日本人とわかるような工夫をするべきだったなぁ。
大歓声を受けながらもチョットさびしく走っていたらハーレムあたりで「佐藤センセ~イ!!」と大きな声が。
何と2年前にニューヨークに転勤されたMさんが千切れんばかりに手を振っているではないか!
思わず駆け寄って再会を喜び合い、お互いにカメラを向け合った。

さていよいよセントラルパークが見えてきた。
「ここからがオバチャンのレース!」といつもの粘りを見せて最後のゴボウ抜きにかかる。
「頑張ろうね~っ、ゴールできるよ~っ」ハイテンションで周りのランナーに声をかけ、横を向いたり振り返ったりして写真を撮っていると・・・えっ?フクラハギが痙攣してる!
余分なアクションがいけなかったんだろうか?
人のこと励ましてる場合じゃないよ~。
両脚ともに痙攣が来て、腓腹筋が目で見てわかるほどにギュッと縮まっていびつな格好になっている。
熱痙攣や~。確かに大汗かいて、給水は十分したけど塩分ちょっと足りなかったかな~。
ギクシャクと歩きながらストレッチして何とか回復。
恐る恐る走り出してしばらくするとまた痙攣。
ラスト2マイルでこれを何度か繰り返した。
傍からみれば滑稽だったろうな。
でも周囲をみると多分私と同じ目にあっているランナーを何人も発見。
わかるわかる、痛いよね~、ヘンな格好になっちゃうけどどうしようもないんだよね~(涙)。
「あと1マイルといっても『スグそこ』とは言えない」・・・プログラムのアドバイスは正しかった。

最後のエイドでスポーツドリンクをゆっくり飲み干してミネラル補給したのが効いたか、フィニッシュゲートの花道はかろうじてスパートをかけることができた。

Good job!Congratulation!
メダルを受けとり、チップをはずし、ドリンクとフードをもらって、預けた荷物を返してもらう。
順路に従っての流れ作業なんだけど、フィニッシャーを待ち構えるスタッフはみんな笑顔で祝福してくれた。

いい大会であっても一度走れば満足するものと、「また来年も来たい」と感じるものがある。
NYCMは明らかに後者だ。
その大きな魅力はやはり、沿道の声援だ。
マラソンなんぞに興じている私たちを「変わり者」と見ないで「スゴイぞ!」「エライぞ!」「カッコイイぞ!」とほめまくってくれる(ように聞こえる)。
あの人たちは自分が走りもしないのに何故あんなに応援してくれるんだろう。
その答えになっているかどうか、私はNYCMが彼らニューヨーカーにとっても大きなお祭りなんだと感じた。
ジャズやロックやレゲエ、ライブ演奏を繰り広げているミュージシャンにとってはまさに晴れ舞台なのだろうし。
そして、ニューヨーカーたちがこのイベントをとても自慢に思っているようにも感じた。
マラソンを走りに来たあんたたちもスゴイが、このお祭りをやってる俺達も大したもんだ!
ようこそ俺達の街に走りに来てくれた!

石原さん、その辺がキーポイントじゃないかなぁ・・・なんてね。
by runmama | 2005-11-16 01:15