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裏方賛歌

女子マネージャーの誕生とメディア~スポーツ文化におけるジェンダー形成~(高井昌吏著、ミネルヴァ書房)という本を読んだ。

高校や大学の野球、ラグビー、サッカーなど男子生徒のスポーツ集団にマネージャーという形で女子生徒が入り込んでいったのは1960年代頃かららしい。
1980年代あだち充の名作「タッチ」(今秋映画化)のヒロイン朝倉南も女子マネージャー人気を不動のものとしたように思う。
私は今も当時もスポーツは自分でやりたい方で、マネージャーだろうがサポーターだろうが支援に回るのは好きではない。
実は南も一時、新体操部にスカウトされて入部し、プレイヤーとしての自分の可能性とマネージャーとしての期待や責務の狭間で悩んだときがあった(その後どうなったっけ?新体操の件は何かとってつけたようなエピソードだった気もするが)。

ただ、私も裏方稼業(誤解を招く表現だけど)を嫌いだとも苦手だとも言わない。
実際、大学時代はさまざまな事情からバスケットボール連盟のスタッフを務め、大会の会場やスポンサーの確保、スケジュールの作成、審判の依頼などに年中走り回っていた。
バスケットに関しては同じ大学の同級生以上に、当時苦労をともにした各大学から集まったスタッフとの親交が今も続いている。
また、今マラソンでは選手として表舞台を走らせてもらっているが、裏方さんへの感謝の気持ちは強く持っているつもりだ。

夏の頃だったか、同じ地域に住むEさんという方からメールを頂いた。
大学2回生の息子さんがウチの息子と同じ小学校を卒業され、Eさんご自身も当時PTAの役員など務められたようで、ウチの親子の先輩ということになる。
息子さんR君は関西でもスポーツの盛んなK大学でラクロス部所属だという。
そのR君が将来スポーツに関わる職業につきたいと悩み、あらたに他の学校への編入まで考えている、何かアドバイスはないだろうかとのことだった。
今の大学を辞めてまで新しい道をということになれば親御さんとしては少々ご心配の様子だった。

K大学はスポーツにおいても伝統ある大学で、そこの体育会はもちろん学生の自主運営ながら非常にきちんとした組織であることを私は自身のバスケット連盟の体験から知っていた。
ラクロス部は比較的新しいクラブだろうが、K大学体育会所属のクラブで頑張っている息子さんなら、しっかりした考えもお持ちだろうと思ったし、R君本人から頂いたメールを読んでそれは間違っていないと感じた。
ただ、スポーツに関わる職業ってのは、若い人がきっと一度は憧れるもののようだが現実は厳しいなんてことを少し偉そうに助言させてもらった。

つい最近、Eさんからまたうれしいお便りが届いた。
R君はいろいろな人の助言も聞き自分なりに問題を解決したのだろう、今は吹っ切れた様子でラクロス部のトレーナーとして頑張っているとのことだった。
K大学体育会発行の新聞にR君の活躍が取り上げられている記事も同封して下さった。
記事によると、選手として入部したが2回生からトレーナーを志望、目標は「日本一を目指すチームのために日本一のフィジカルトレーニングを指導すること」だそうだ。
素晴らしいなと思うのは彼自身が今も優れたアスリートだということ。
最近行われたフィジカルテストのシャトルランでK大学記録を更新したと、本人から追伸の報告も頂いた。

私の裏方体験も振り返れば充実した貴重な体験で、間違いなく私を成長させてくれた。
しかし、当時は何かの拍子に「これは自分で選んだ道ではない。チームの事情で私が貧乏くじを引いたんだ」というような気持ちが起こっていた。
苦しいとき辛いときにはそれを言い訳にすべてを投げ出しそうになった。
R君はそんな言い訳をできない道を自ら選んだのだと思う。
トレーナーとしてのスキルアップとともに自らの身体能力もまだまだ向上させようという意地と誇りを感じた。
心からR君にエールを送りたい。

Eさん うれしいお便りありがとうございました
by runmama | 2005-10-20 10:11